後の祭り * ページ44
「最近気付いたんだけどさ。見て、私のほっぺ凄くもちもちしてない?」
「ふふ、確かにもちもちしていますね。でももう遅いですから、早く寝てくださいね」
「あっ、そうだった。私せんせにおやすみ言いに来たんだった」
――なんて事ない記憶、いつも通りお泊まりをしていた日の思い出の
そうだ。私は先生に「おやすみ」を言いに来たのだった。
棺で眠る先生を見る。
その表情は安楽そのもので、ちっとも悲しそうではなかった。
「おやすみ。ゆっくり休んでね」
嘘だ。全くの嘘っぱちだ。本当は起きて欲しい。
瞼を開いて、体を起こして大きな伸びをして、それから寝惚けた声で「おはようございます、Aさん」と言って欲しい。
もう目を覚ます事のない先生の、冷たい手を握る。
先生は私のすぐ傍に居るのに、寂しくて、恋しくて堪らない。
もっとちゃんと話をしておけば良かった。
もっとあなたの事を知ろうとしていれば良かった。
もっと沢山、我儘を言って一緒に散歩したりだとか、あなたの好きな映画を一緒に見たりだとか、特別な思い出を作っておけば良かった。
何もかも、後の祭りだ。
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miko(プロフ) - 通りすがりの人Aさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…!タイプと言って頂けて光栄です。考察までしてくださって嬉しい限りです!お心遣いもありがとうございます。次回作も楽しんで頂けると幸いです。 (5月9日 18時) (レス) id: 9457fcfd26 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの人A - 「大人になるということ」、個人的な考察として富士樹海のことなのかなぁと勝手に考察していました。樹海のまた別の特長も相まって人生に迷子になっちゃったんだろうなぁと、考察のしがいがありました。次回作も読ませていただきます。 (5月7日 21時) (レス) @page15 id: 6d2a917923 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの人A - コメント失礼します。話の展開や言葉遣い、細部に至るまでのこだわり、本当にタイプの文に久しぶりに出会えて大満足です。素敵な作品ありがとうございます。→(字数上次になりますが次の文は考察含みますので作品様の方針にそぐわない場合消していただいて構いません) (5月7日 21時) (レス) @page15 id: 6d2a917923 (このIDを非表示/違反報告)
miko(プロフ) - 富司純河さん» 励みになるお言葉をありがとうございます…! (4月30日 2時) (レス) id: 9457fcfd26 (このIDを非表示/違反報告)
富司純河(プロフ) - 続編お待ちしております。 (4月29日 10時) (レス) @page49 id: ecd0918c08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:miko | 作成日時:2023年5月10日 3時